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アメリカ国家情報会議が描く将来の世界(4) | Global Trends: Paradox of Progress - Three Scenarios for the Distant Future

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第1回(The Future Summarized)第2回(Trends Transforming the Global Landscape)第3回(Near Future)から随分と間があいたが、2017年1月にアメリカの国家情報会議が公表した Global Trends: Paradox of Progress」の一部を仮訳していく。今回からは、将来の3つのシナリオについて。
 

 

遠い将来の3つのシナリオ:「島」(Islands)、「軌道」(Orbits)、「コミュニティ」(Communities)

5年を超えた未来を考えることは、非常に多くの不確実性を伴う。そのため、選択されたトレンドや、選択肢、不確実性が、複数のシナリオにおいておのように展開される検討することが有用だ。一つのシナリオが、将来のグローバルな発展の全体像を表現することはできないが、「冷戦」や「金ピカ時代」が過去の時代の主要テーマを定義したように、複数のシナリオは、もっとも重要な課題やトレンドが未来をどのように特徴づけるかを描くことができる。次の20年を形作る3つの主要な不確実性は、以下の3点を中心に展開する:

  • 国内のダイナミックス。政府と市民が互いの期待についていかに再交渉し、エンパワーされた個人と急速に変化する経済によって特徴づけられる急速な変化の時代にいかに政治秩序を作り出すか。
  • 国家間のダイナミックス。選ばれたグループや個人とともに、大国がいかに競争と協力のパターンを作り出すか。
  • 長期的、短期的なトレードオフ。短期的には、気候変動や変革技術などの複雑な地球規模の課題について、国家や国際レベル他のアクターがどの程度準備するのか。

「島」、「軌道」、「コミュニティ」の3つのシナリオでは、重大なトレンドや選択肢がどのように交差し、異なる将来の道筋をつくるかを探る。これらのシナリオは、国家レベル(島)、地域レベル(軌道)、地方自治体や多国籍レベル(コミュニティ)で、短期的なボラティリティに対する代替的な対応を示す。

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「島」(Islands)

このシナリオでは、長期的な停滞につながることになるグローバル経済の再構築をとりまく課題を探り、伝統的な経済繁栄モデルとグローバリゼーションの拡大モデルが今後も続くとの前提に挑戦する。このシナリオでは、グローバリゼーションへの抵抗が増大し、新しい技術の労働と貿易を変え、政治的不安定性が増大するにつれ、ガバナンスが、経済的および物理的な安全保障に関する将来の社会的な要求を満たすことが難しくなることを強調する。このシナリオは、新たな経済成長と生産性の源泉を活用すべく、変化する経済的・技術的条件に対応するために政府が直面する選択肢を強調する。これらにより、一部の国が内向きに進み、多国間協力のための支援を減らし、保護主義的政策などを採用する可能性がある。

 

富の集中による不平等の台頭。それは、社会における緊張を助長し、グローバリゼーションに対する抵抗を生んだ。

人工知能とオートメーション技術の普及は、経済学者が期待していたよりも多くの産業を破壊した。

政府が、包括的なグローバルな取決めよりも、地域貿易ブロックと二国間貿易協定を採用することを好むにつれ、貿易パターンが変化した。

世界経済の成長の鈍化が、エネルギー価格の低下をもたらし、ロシア、中東、南米のエネルギー国家に追加的な圧力をかけるとともに、エネルギー国家間の競争を激化させた。

中国とインドが、「中取得国の罠」にはまったままだった。両国は、対外貿易が弱った時により高い経済成長を促進するための十分な国内需要を生み出すことができず、経済成長、賃金、生活水準が停滞した。

国内と経済の課題により、アメリカとヨーロッパが内向きになった。

気候条件の変化は、特に中東やアフリカにおいて、干ばつによる食糧や水の供給低下や、気温上昇による屋外労働の能力低下をもたらし、多くの政府の能力に挑んだ。

2023年の世界的なパンデミックは、疫病の広がりを抑える一環として、グローバルな移動を大きく減少させ、世界的な貿易の減速と生産性の低下をもたらした。

こうした出来事が組み合わさり、世界はより防衛的でセグメント化することになった。不安な国家が比喩的かつ物理的に外的なチャレンジに対して「壁」を設け、不安定な海の中で「島」になることを求めた。

経済的なチャレンジは、2008年の金融危機の20年後にも残っているが、経済成長と繁栄の新たな時代に入っていることが、いくつかの発展によって示されている。

さらに、グローバリゼーションと貿易の減速は、地域レベルでの新世代の実験、イノベーション、アントレプレナーシップを喚起している。

バイオテクノロジーとヘルスケアの発展は、より健全な労働力を創出し、新産業の創出と生産性の向上につながっている。

経済成長は引き続き、新技術、地域でのイノベーション、アントレプレナーシップに依存する。

 

含意

このシナリオは、政府が不平等の増大、先進国の成長率の低下、解雇、社会的な分裂につながったグローバルな経済状況の変化に対処できない場合の影響を探っている。このシナリオは、先進国が、過去の経済政策の負の副産物に対処し、ポピュリズムと一体性(inclusion)の間の緊張を管理する必要性を強調する。最も成功する国々とは、研究とイノベーションを推進し、情報共有を促進し、STEM(科学、技術、工学、数学)における質の高い教育と生涯学習を維持し、仕事の再訓練を提供し、ハイテクの才能を引きつけるために税制や入国管理、安全保障の政策を採用する国々だ。そのような取組みは、実験やイノベーション、起業家精神を奨励し、国内生産と雇用創出を促進する。

他方、情報へのアクセスを管理し、知的財産権を尊重せず、ハイテクの才能の受け入れを妨げるような国は、新たな技術の進歩による経済的利益から除外される可能性が高い。こうした発展は、技術に支えられたテロ攻撃や犯罪行為も生み出すことになり、安全保障上の問題も重要となる。

 

「軌道」(Orbits)

このシナリオは、国内の安定性を維持しつつ、領域における影響力を追求する大国の競合により生じる緊張の未来を探る。ここでは、ナショナリズムの高まり、対立のパターンの変化、破壊的な技術の登場、グローバルな協力の縮小のトレンドが、国家間の紛争のリスクの増加にいかに収束するかを検証する。このシナリオは、安定と平和を強化する、あるいは緊張を悪化させる政策選択を強調する。これらの選択肢は、国家安全保障顧問が、2032年のスミス大統領の第2期任期の終わり近くに国際環境を評価した回想録を通じて探求している。

 

含意

このシナリオは、地政学上の競争の激化がいかに、国家間の紛争リスクを高め、ルールに基づく国際秩序を脅かす可能性があるかを検証する。また、同盟国を安心させることで、「グレイゾーン」の紛争が国際規範を損ねたり、大国間の戦争にエスカレートするのを防ぐ重要性を強調している。さらに、極超音速兵器、自律システム、対宇宙兵器、サイバーオペレーションなどの新しい機能の普及は、新たな拡大(escalation)のダイナミクスをもたらし、誤算(miscalculation)のリスクを増大させる。不安定な事象を引き起こし、関係するすべての人々の危険を増加させる地政学的緊張の高まりは、ライバルが一致点を見出し、リスクを減らす信頼醸成措置を交渉するインセンティブを提供するかもしれない。しかし、こうした結果は保証されておらず、共有リスクの問題に対するより大きな協力の可能性にオープンでありながら、誤算(miscalculation)や拡大(escalation)のリスクを低減するような地政学的な競争への対処の重要性を強調している。

 

「共同体」(communities)

このシナリオは、将来の経済およびガバナンスの挑戦の巨大さとして現れる課題を探求する。それは、地方自治体や民間のためのスペースを創出しながら、各国政府の対応能力を試し、結果的に、ガバナンスの将来についての仮定を問う。このシナリオは、変化する権力の特質とICTの進歩に関連するトレンドを強調し、こうしたトレンドが今後のガバナンスの機会とハードルの双方を生む選択肢にどうつながるかを特定する。2035年のカナダの大都市の市長の視点から、過去20年間に目撃した変化を内省しながら、記述する。

 

含意

このシナリオは、ガバナンスの将来に関連する問題を検討する。その中で、政府は、新たな課題に取り組むために、都市のリーダー、NGO、市民団体など幅広いアクターとの官民連携を奨励する政策とプロセスが必要となる。特に、巨大な多国籍企業や慈善団体は、貧しい社会に研究、教育、訓練、保健医療、情報サービスの提供といった政府の業務を一層補完する可能性がある。

国家は国家安全保障やその他の「ハード・パワー」の主要な提供者であり続ける一方で、地方、民間、多国籍ーのコミュニティを活用する能力は、彼らの「ソフト・パワー」の特質とレジリエンスを高める。地方分権のガバナンスと官民連携を後押しする自民民主主義は、この世界に最も適している。こうした社会では、技術が、集団意思決定のような、国民と政府の新しい形のインタラクションを可能にする。しかし、同様に運営できるとは限らず、権威主義や国家の失敗など、様々な結果につながる可能性がある。

 

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