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アメリカ国家情報会議が描く将来の世界(3) | Global Trends: Paradox of Progress - Near Future

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第1回(The Future Summarized)第2回(Trends Transforming the Global Landscape)に続き、2017年1月にアメリカの国家情報会議が公表した Global Trends: Paradox of Progress」の強調されている部分を中心に仮訳していく。今回は、主要地域・国の短期予測(ヨーロッパ、アメリカ大陸)。アメリカの外交政策の前提が垣間見れる。

 

近未来:緊張が高まる(Near Future: The Tensions are Rising)

国内では、国民がこの絶えず変化する世界において政府に何を期待できるかという基本的な疑問を提起しているため、緊張が高まっている。国民は、それらの条件が国外において一層形成される中、国内でより広範かつ確実に平和と繁栄を提供するよう政府に求めている。

 

同様に、こうしたダイナミクスは国家間の緊張を高め、今後5年間の国際紛争のリスクを高めている。障害を負ったヨーロッパ、世界におけるアメリカの役割についての不確実性、紛争予防と人権に関する弱体化した規範は、中国とロシアに道を開いた。

 

一方、テロリズムの脅威は、国、グループ、個人が危害を加える能力が多様化するにつれ、拡大するだろう。国内および国家間の緊張の高まりとテロによる脅威の増大の結果、グローバルな混乱・無秩序、国際システムにおけるルール、制度、権力の配分に対する疑問を大きくする。

 

ヨーロッパ

ヨーロッパの高まる緊張と、将来の結束についての疑念は、経済的、安全保障上の課題と不整合な制度に由来している。ヨーロッパは、さらなるショックに直面する可能性が高い。銀行は不平等に資本化、規制され続け、域内間・域内への移住も続く。Brexitは他のヨーロッパ諸国の分離主義的な動きを促進する。EUの未来は、制度改革、雇用と成長の創出、エリートの信頼回復、移民が国内文化を根本的に変えるとの国民の懸念への対処の能力にかかっている。

アメリカ

今後5年間でアメリカのレジリエンスが試される。ヨーロッパ同様、厳しい経済の状況は社会と階級の分離をもたらした。経済改善の兆しにもかかわらず、リーダーや機関への国民の信頼の悪化、政治の二極化、低成長と給付金の増加に制約された歳入など課題は重大だ。一方、ワシントンのグローバルなリーダーシップの役割については不確実性が高い。国や地方レベルでのイノベーション、柔軟な金融市場、リスク・テイクに対する耐性、他国よりバランスの取れた人口動態等は、上方ポテンシャルを提供する。

中南米

国家としての脆弱性や麻薬密輸が中米を悩まし続けるが、南米は他の地域よりも安定しており、右派・左派双方からのポピュリストの波からの復帰を含む民主主義的な優位性を有している。しかし、より大きな経済的、社会的な安定を提供するための政府の努力は、予算と債務の制約にぶつかっている。中南米は、経済運営に成功していない政府や広範な腐敗を煩っている政府でより頻繁な変更がみられるようになる。

内向きな西洋諸国?(An Inward West)

北米、ヨーロッパ、日本、韓国、オーストラリアの民主主義工業国では、指導者は中流階級の幸福感を回復する方策を模索したり、ポピュリストや移民排斥主義者の衝動を緩和しようとする。その結果、財政制約や人口動態上の問題、富の集中に対処するための国内スキームを試しつつ、コストのかかる海外に対する冒険を避けるといった、過去数十年経験したことのない内向きな西洋となるかもしれない。

 

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中国

中国は、バランスのとれた政治的安定に向け、手強い試練に直面している。30年にわたる歴史的な経済成長と社会変化を経て、北京は、成長の鈍化と負債騒動(debt binge)の後遺症の中、投資主導、輸出ベースの経済から国内消費主導の経済に移行している。政府が正当性と政治秩序を維持するためには、新しい中産階級が求めるクリーンな空気、手頃な価格の住宅、改善されたサービス、継続的な機会を満たすことが不可欠だ。 習国家主席の権力強化は、確立された安定的な継承システムを脅かすかもしれないし、海外摩擦の際に北京が時に支持を奨励する中国ナショナリズムをコントロールすることが難しくなるかもしれない。

ロシア

ロシアは、ナショナリズム、軍事の近代化、核戦力による威嚇、外国への介入を通じて、グレート・パワーとしての地位を取り戻そうとしている。しかし、国内では、停滞した経済が3年連続の不況に向かっており、ロシアはこれまで以上に制約に直面する。モスクワは安定と秩序を重んじ、個人の自由と多元主義を犠牲にしてロシア人に安全を提供する。モスクワのグローバルな舞台での役割維持する能力、それが混乱・分裂であったとしても、国内の政権と支持の源泉となっている。プーチン大統領は個人的に人気があるが、35%という与党支持率は、生活の質の低下や権力の乱用に対する国民の不安を反映している。クレムリンの戦術が揺らぐと、たとえ地位の低下がより積極的な国際行動を示唆するとしても、ロシアは不満をもつエリートによる国内の不安定にさらされる。モスクワが、自国経済の多様化を遅らせるほど、政府は支配を維持するために、ナショナリズムを掻き立て、個人の自由と多元主義を犠牲することになろう。

一層積極的になる中国とロシア

北京とモスクワは、経済や人口動態の逆風が物質的発展を一層遅らせ、西側がその地場を取り戻す前に、一時的な競争優位を確保し、歴史的誤りと非難することを正そうとする。 中国とロシアはともに、域内で正当に支配力を持ち、その安全保障と物質的利益に合致するよう地域の政治や経済を形成することができるとの世界観を堅持している。両国は、近年、地域においてより大きな影響力を行使しようと積極的に行動し、米国と地政学的に争い、ワシントンに対して、アメリカが歴史的に反対してきた、排他的な影響を行使する地域圏を受け入れるよう強いた。

北東アジア

北東アジアでは、朝鮮半島周辺の緊張が高まる可能性が高く、今後数年間に深刻な対立が生じる可能性もある。金総書記は、利益供与と恐怖を組み合わせて権力を強化するとともに、原子力とミサイルの計画に賭け、アメリカ大陸を近く脅かす恐れのある長距離ミサイルを開発している。 北京、ソウル、東京、ワシントンでは、北東アジアの安全保障リスクを管理する共通のインセンティブがあるが、現在の相互不信と戦争・占領の歴史は協力を困難にしている。原子力とミサイルの追加実験を含む北朝鮮の挑発は、地域の安定を悪化させ、近隣諸国が安全保障上の利益を守るための行動、時には単独、を引き起こす可能性がある。 

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中東・北アフリカ

事実上、地域のあらゆるトレンドが間違った方向に向かっている。継続する紛争と政治経済改革の欠如は、地域の明るい材料である貧困削減を脅かしている。資源への依存と海外からの支援は、市場、雇用、人的資本を抑制することで国家への依存を助長するようなエリートを下支えしてきた。原油価格が石油ブームの水準まで回復する見込みが薄い中、ほとんどの政府は現金支出と補助金を制限しなければならない。一方、ソーシャルメディアは、人々が欲求不満を解消するための新しいツールを提供している。ムスリム同胞団やシーア派を含む保守的な宗教団体や、クルド人を中心とする民族主義組織は、地域の非効率的な政府の主要な代替候補となるであろう。検査等を受けないままでは、現在のトレンドがさらに地域を寸断する。イスラム過激主義の影響は拡大し、少数派への寛大さと存在感が小さくなり、さらなる移住の流れを作り出す。

地政学的に、中東・北アフリカにおける人道危機や地域紛争の拡大は、国際的な紛争解決と人権規範の信頼性をさらに損なう。ワシントンは信頼できないとの地域の首府の認識は、ロシア、おそらく中国からの競争、そして、アラブ諸国によるアメリカのコミットへのヘッジを招く。一方、イラン、イスラエル、おそらくトルコは、域内の他の国と比べて権力と影響力が拡大する可能性があるが、相互に対立する。

サブサハラ・アフリカ

民主的慣行が拡大、市民社会組織が大きく増加し、より良いガバナンスに対する国民の要求がより差し迫ったものとなる。いまだに、多くのアフリカ諸国は、ビッグマン・ルール、利権政治、民族的な偏見に苦しんでいる。今後5年間で、アフリカの人口は、より若々しく、都市的で、モバイルで、ネットワーク化され、教育を受け、主張するようになる。急激な都市化は、インフラにストレスを加え、エリート腐敗の顕在化させる。それにより、サービスや機会に対する国民の不満を煽る。約7,500万〜2億5,000万人のアフリカ人が重度の水ストレスを経験し、大量移民をもたらす可能性が高い。アフリカは開発を推進しようとする政府、企業、NGO、個人の実験の場であり続けるだろう。中産階級の拡大、活発化する市民社会、民主的な制度の普及を含む過去20年間の進展は、さらなる発展の可能性を示唆している。

南アジア

インドは今後5年間、中国経済が冷え込み、他の地域では成長が止まりかける中、世界で最も経済的に成長する国となるが、不平等や宗教に対する国内の緊張がその拡大を複雑にする。しかし、南アジアの大国を主張するインドの広範な取組みの一環としてニューデリーは、南アジアの小国に対して、開発援助とインド経済への接続性の向上を通じて、インドの経済成長の恩恵を提供し続ける。激しい過激派、テロ、不安定は、アフガニスタン、パキスタン、脆弱な地域関係を覆い続ける。インドの発展の質は、広範にわたる貧弱な公衆衛生、衛生設備、インフラ整備への対応に依存する。南アジアが民間セクター、コミュニティグループ、NGOにオープンであることは、特に政府が社会を分裂させており狂信的・愛国的なグループへの支援を抑制する場合には、エンパワーされた個人の時代において、良いポジションをとることがでできるだろう。

南アジアでは、パキスタンは、インドの経済的・軍事的能力に対し、不釣り合いな方法(核など)で対処せざるを得ないと感じる。対照的に、インドは、イスラマバードと北京の双方を注視し、ヨーロッパ、日本、アメリカなどとの軍事パートナーシップを模索しながら、隣国パキスタンに対する優位性を高め、伝統的な力を強化する。インド、パキスタン、おそらく中国による核兵器の海上配備は、今後20年間にインド洋を一層核化する。

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テロリズムの脅威の拡大

テロリズムの脅威は、国家、団体、個人が危害を加えるための手段や動機がが多様化するにつれて増加する。テロリストは独自の宗教解釈によって暴力を正当化し続けるが、他にも複数の根底にある推進力も影響している。

中東の多くの国では、国家構造の機能停止が過激派の活動を許している。進行中のイラン-サウジアラビア間の代理戦争は、シーア派-スンニ派の派閥抗争を助長している。宗教に起因するテロの場所は変動するが、暴力的な宗教ナショナリズムやシーア派とスンニ派の分裂は、短期的に悪化し、2035年までには減少しないかもしれない。過激主義者は、世界のいくつかの地域で、怒りを利用し、認識された不公正と深まる宗教的な共通のアイデンティティーを結び付けていく。情報の連結性の増大、多くの発展途上国における国家の脆弱さ、先進国における伝統的な労働からの転移による疎外感の増加により、宗教は意義付けと継続性の一層重要な源泉になる。15世紀の印刷技術やグーテンベルク聖書、1989年のワールドワイドウェブの発明による情報技術の進歩は、宗教的な内容が広く普及することを可能にする。

宗教以外にも、心理的、社会的要因が個人のテロリズムへの参加を促し、テロ集団が志願者と資源を引き付け、結束を維持するのを可能とする- 一定レベルの疎外、民族や親族の結びつき、国籍喪失(denationalization)、民族的・宗教的緊張。

技術は両刃の剣になる。テロリストのコミュニケーション、採用、物流、致死性を促進する。他方、当局が脅威を特定し、特徴付けるためのより洗練された手法を提供する。技術は、脅威をさらに分散させる。このトレンドは、テロ対策の努力に挑戦し、将来のテロリストの企てや戦略の本質を変える。

 

バランスの中での未来の国際秩序

今日の政治、経済、安全保障の構造と制度を可能にした第2次世界大戦後の国際秩序は、権力がグローバルに拡散し、国際的な意思決定の「テーブル」の席を入れ替え、世界的に権力が拡散するにつれて、疑問が投げかけられている。今日、野心的な国は、ゲームのルールと国際的状況を自国の利益に有利な方法で調整しようとしている。このダイナミクスは、国連安全保障理事会やブレトンウッズ機関などの国際機関の改革を複雑にし、1945年以降の自由主義的価値観と米国のリーダーシップの特質である公民権、政治的権利、人権が今後もそうあり続けるのか疑問を投げかけている。現在のトレンドが維持されるならば、安定したものと思われてきた規範は一層脅かされ、新たな規範を構築するための合意見出すことは難しい。

進化する国際秩序のいくつかの特徴は明確だ。中国とロシアが周辺地域に支配を及ぼそうとし、米国の影響力を優位にたつことのない秩序を促進しようとしており、地政学的な競争が激化している。国家と組織は将来の秩序について市民の期待を具現化し続けているが、市民と地方の懸念は、国家を国際政治と国内政治が分離できないところまで追い込む。これにより、一部の個人や小規模グループが、新旧のプラットフォーム、会議、機関を通じてこうしたアイデアを支持したとしても、一部の国で既存の安全保障のコンセプトや人権に対するコミットメントが弱まっていく。権威主義体制は、人権規範を再解釈し操作する可能性が高い。これは、保護する責任をいつ適用するかなど、国外の義務に関する国際的な領域でのコンセンサスが減少することにつながる。気候変動に係る規範と慣行、国内・国際の開発政策への影響は、21世紀の共通原則を発展させる可能性の非常に高い候補だ。

 

グローバルな混乱や不確実性につながる国際競争の短期的な可能性は、アラカルト的な国際主義が存続する限り、引き続き高まるだろう。支配的な国家がグローバル課題のサブセットに協力を限定し、地域問題に対して積極的に利益を主張すれば、国際的な規範や制度は腐敗し、国際的な制度は地域的な紛争領域に寸断されるだろう。

 

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