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ヤラレタ!-「バッタを倒しにアフリカへ」

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バッタ博士こと、前野ウルド浩太郎さんによる、アフリカ・モーリタニアでのバッタ研究奮闘記「バッタを倒しにアフリカへ」。ご本人はいたって真剣なのだが、どことなく とぼけた筆致もあり、何とも言えないほんわかさが全体に漂う。不遇をポジティブにとらえ、前に進む姿に勇気づけられた一冊。

 

私は虫が大の苦手である。バッタが草むらからピョンと飛び出でて来ようものなら、声が出ることもなく、身体が硬直する。そんな私がこの本を手に取ったのは、2018年の本屋大賞を受賞したからに他ならない。 

好きなことをして生きていく。

生き方の一つの理想だが、その道は険しい。毎年、数多のポスドクが生まれ、テニュア獲得にしのぎを削る厳しい世界。 著者は、一発逆転?を目指し、「地球の歩き方」もないモーリタニアに単身赴き、サバクトビバッタの研究に明け暮れる。危うく地雷原に足を踏み入れそうになったり、刺されると死ぬかもしれないというサソリにうっかり刺されたり、文字通り、命を懸けて研究に臨む。

著者が研究対象としたサバクトビバッタは、アフリカに生息する害虫。時に数百億という規模で群れ、長距離を飛行しながら農作物を食い尽くしていく。食い荒らす。それにより、西アフリカだけで年間400億円以上の被害を被り、地域の貧困の大きな要因となっている。サバクトビバッタの生態が分かれば、駆除に向けた大きな一歩となるはず、

 全ては、地域のため、バッタのため、そして、昆虫学者として食べていくために。

 んな使命感と自己実現に燃える著者に容赦なく襲う数々の困難。彼は持ち前のポジティブ・シンキングとコミュニケーション力で見事に乗り越えていく。


例えば、恋焦がれたバッタに会えないと途方に暮れているかと思えば、たまたま見つけたゴミムシダマシに「浮気」し、独自に雌雄判別法を発見し、論文を発表してしまう。そして、とうとう文部科学省からの研究助成が潰える時、バッタ研究の重要性を認知してもらうために、自らが広告塔となることを決意、なんと、「ニコニコ学会ベータ:むしむし生放送」にまで出演することに。無職であることを自身の強みとして、売り込み、ついに、京都大学の研究員のポストを獲得するに至る。

ちなみに、著者は、モーリタニアの公用語であるフランス語はほとんど話せず、積極的に向上させようともしない。人柄と創意工夫で、現地ドライバーとはツー・カーの仲になり、研究所長からも、「ウルド」という「~の子孫」を表す最上級のミドルネームを授けられるまでに。その他、数多くの仲間に恵まれ、着実に成果を積み上げていく。


さて、本書を読了した私は、著者の広報戦略にまんまとはまり、研究活動を支援していることに気がつくのだが、不思議と、著者のストイックな姿勢、そして、文章の面白さもあり、むしろ支援したくなってしまうのだがから、恐れ入る。しかも、心なしか、バッタに対する愛情まで、本当にわずかながら、芽生えつつある。

残念ながら、私は図書館で借りてしまったので、資金面ではお役に立てていないが、著者のにわかファンとして、応援していきたい。ちなみに、著者のブログ「砂漠のリアルムシキング」によれば、現在は、研究に専念されているご様子。

 

めでたしめでたし

 

〔余談〕 

バッタつながりでいくと「ウニもすごい バッタもすごい」(本川達雄)もお勧め。こちらは、デザインの生物学と銘打っているように、昆虫や貝、ナマコなどの体がいかに合理的かを、分かりやすく解説してくれる。